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2012年10月8日月曜日

尊敬するミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
初音ミクは、「ネギを持つ歌手」として世間に知られているけれど、
ミクさんには、尊敬している野菜が一つある。

「おはようございます。ミクさん。」
「おはよー♪」

「なんだか、嬉しそうですね。」
「さっき、ネギの王様を見つけたよ。」

ミクさんが指し示した先には、箱があり、
箱の上には、薄茶色の丸い塊が鎮座していた。

「玉葱(= たまねぎ)ですね。」
「そうだよ。」

「ネギの王様ですか?」
「風格が漂っているんだよ。」

昨日買ってきた玉葱を、台所の隅に転がしておいたのだけれど、
その中の一つが、ミクさんの目に止まったようだ。

「人間の学者の中には、玉葱と葱(= ねぎ)は別の種類だと言っている人も居ますよ。」
「でも、タマネギを育てると、ネギになるよ。」

太いネギのような姿をした玉葱は、
葉玉葱(= はたまねぎ)として、八百屋で売られている事がある。

「そう言われてみると、そうですね。」
「だから、ネギの王様なんだよ。」

ミクさんがどこで覚えてきたのかは知らないけれど、
この家では、「タマネギ = ネギの王様」と呼ばれる事になった。


「ところで、私はこれから料理をしますので、ネギの王様を返してくれませんか、ミクさん。」
「今は駄目。」

ミクさんは、冷蔵庫から取り出したネギを右手に持ち、ネギの王様の前で正座した。
そして、真剣な目を私に向けて、

「きちんと挨拶してからなんだよ。」

仕方が無いので、私はミクさんの挨拶が終わるまで、玉葱料理を中断する。


「私は初音ミクです。ネギの王様。」

箱の上に鎮座している玉葱に向かって、深く頭を下げるミクさん。
私も釣られてお辞儀する。

「ネギと言えば、初音ミク。そして、タマネギと言えはあなたです。」

片手でネギを振り、ネギ娘である事をアピールするミクさん。
ミクさんからネギを渡された私も、彼女に合わせてネギを振る。

「これからも、この世にネギを広める為に、私達は一層努力する次第です。」

ミクさんがネギの伝道師だったなんて、初耳だ。
そして、「私達」って、私は関係無いですよね。ミクさん。
冷蔵庫に眠っていたネギは、ミクさんのネギ振り速度に耐えられず、折れてしまった。

「ですから、今日の所は安心してお休みください。ネギの王様。」

ミクさんは、ネギの王様に向かって礼をする。
私も習って、礼をする。
ミクさんは一連の挨拶(= あいさつ)を終えると、
ネギの王様を両手で運び、隣にいる私に手渡した。

「お料理頑張ってね。」

なんですと。
ネギの王様を、挨拶の後、直ちに料理に使うとは。

ミクさんの思考回路には付いていけない私だけれど、
私は、ネギの王様に丁寧に包丁を入れ、味噌汁(= みそしる)を作った。
折れたネギも少し切って入れたから、ミクさんはとてもご満悦だ。


「そういえば、ネギの王様の話は、どこで耳にしたのですか。ミクさん。」
「リンちゃんだよ。」

リンちゃんと言えば、あの、お菓子作りが得意なリン警官ですか。

「リン警官は、何と言っていましたか。」
「タマネギは、野菜の王様候補だって。ネギ代表だから、今期の最有力候補だよ。」

目をキラキラと輝かせながら、タマネギの将来を語り出すミクさん。
あまりにもミクさんが嬉しそうだったので、私は彼女の話を否定せずに、最後まで聞いてしまった。
でも、野菜の王様は、任期制では無いと思いますよ。ミクさん。


後日、リン警官にこの話をした所、

「ミク姉、、、」

リン警官がしばらく絶句していた事は、ここだけの秘密だ。



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o 文章作品
o 作品名 = 尊敬するミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2012-10-08 on Blogger


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    ミクさんが新作料理を作る時。第1楽章
(2012年10月8日訂正。「非常に」から「とても」)

2012年7月17日火曜日

武術家のミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
初音ミクと言えば、歌う事が大好きという印象があるけれど、
ミクさんは、どこからか武道や武術の本を拾ってきて、その真似事をする事がある。

「空手の本を見つけたよ。」

本のタイトルは、「VOCALOIDの為の空手入門」。
本の表紙には、青いマフラーを巻いた青年が、足を高く伸ばしている姿。

「その本は、どこに落ちていましたか。ミクさん。」
「玄関の前だよ。少し練習してくるね。」

このミクさんに限らず、武道や武術を嗜(たしな)むミクさん達は、意外と多い。
彼女達は、ステージで歌う時の振り付けの参考にする為に、体の動かし方について勉強しているのだ。

「いってらっしゃい。」
「いってきまーす♪」

ミクさんを見送った私は、窓を開けて外を眺めた。
すると、家の外に出たミクさんは、いつものように、
家の前を歩いている男の人を捕まえて、話しかけていた。

「お兄ちゃん。空手の練習に付き合って。」
「喜んで付き合うよ。ミク。」

ミクさんが捕まえたのは、彼女の兄のKAITOさん。
寒くもないのに青いマフラーを巻いている彼は、妹の将来をいつも心配している苦労人だ。
そして2人は、道の片隅に移動して、
どこからか持ってきたマットレスを辺りに敷き詰めて、今日も武術の練習が始まった。


「最初は軽く、肩慣らしだ。ミク。」
「えいやー。」

「もう一回。」
「おー。」

真面目に拳(こぶし)を前に出すミクさんと、彼女の拳を片手で受け流すKAITO先生。
一見、遊んでいるように見えるけれど、ミクさんの尋常(じんじょう)ではない真面目さは、彼の指導心に火を付ける。

「ミク、拳(こぶし)を当てた時には、一番効果が高い方向に力を通すんだ。」
「ネギぱーんち。」

「ミク。ネギの方が痛いよ。」
「ネギネギぱーんち。」

また今日も、ミクさんを熱心に指導しているKAITOさん。
KAITO先生の熱血指導は、更に熱さを増していき、ミクさんにしか理解出来ない言葉で話し出す。

「アイス成分が足りないな。ミク。」
「れいとー。」

「ミク、この動きに優雅さを、バニラ・エッセンス3滴分増やすんだ。」
「あまあまー。」

KAITO先生の難解な専門用語を瞬時に理解し、動きを変えるミクさん。
彼のアイスな発言に対して、間髪入れずに反応する事が出来るなんて、流石は彼の妹だ。
私がミクさんの理解力に感心していると、ミクさんの掛け声が変化して、練習は次の局面を迎えた。

「私、もっと頑張るよ。」

目の色が変わったミクさんと、全力で身構える構えに変化したKAITO先生。
KAITO先生は知っている。
初音ミクの実力は、人間離れしている所にある事を。
そして、ミクさんの目が輝き出した今、彼女の真の力が発揮されるという事を。

「えいやー。」

ごうっ。

ミクさんが一突きした直後、僅(わず)かに遅れて音がする。
荒ぶる髪の発動だ。
ミクさんの攻撃を止めた相手を、彼女の髪が豪快に吹き飛ばす。
ミクさんが無意識の内に繰り出してしまう、彼女の最も恐ろしい髪技だ。

ビューン。ドサッ。

ミクさんの髪は彼女自身を守るように包み込み、
青いマフラーを巻いた物体は、大きなボールのように空を舞った。
そして、敷き詰めたマットレスの上に豪快に叩きつけられたKAITO先生は、
ゆっくりと立ち上がり、不敵な薄笑いを浮かべてこう言った。

「ミク。まだまだだな。」

いえ、体がよろけていますよ、KAITO先生。
この状況下で、目が輝いているミクさんを挑発する必要があるなんて、
初音ミクを鍛え上げる「ミク道」とは、かくも険しい道なのか。

「もっともっと、頑張るよ。えいやー。」

普段は軟弱に見えるのに、妹の前では異常な精神力を示すお兄さん。
そして、とても素直な妹は、兄の言葉を信じ、兄の示した道を突き進む。

パシッ。ごうっ。飛んでドサッ。「ミク。もっと鋭く!」
パシッ。ごうっ。飛んでドサッ。「ミク。僕を倒せないようなら、まだまだだ。」

どのように観察しても、ミクさんの髪のサンドバックになっているKAITO先生。
それでも彼は止めないし、ミクさんは止まらなかった。

パシッ。ごうっ。飛んでドサッ。「ミク。腕の動きは正確に。」
パシッ。ごうっ。飛んでドサッ。「棒アイスのはずれの方が痛いよ。ミク。」

太陽が西へと移動して、辺りは赤く染まり出す。
永久機関を彷彿(ほうふつ)とさせる彼女達の特訓は、
KAITO先生がある一言を告げる事で、ようやく幕を閉じた。

「今日はこれ位にしようか。ミク。」
「うん。ありがとう。お兄ちゃん。」


私がミクさん達を出迎えた時、ミクさんの指導教官である彼は、
どこから見てもボロボロな姿にも関わらず、爽やかな笑顔でこう言った。

「僕が居なくても自分の身を守れるように、ミクをもっと鍛えないといけないな。」

ミクさんの通り道に武道や武術の本を落とし、
彼女が出てきた所を、毎回偶然通りかかり、
自らの身を犠牲にしてまで、彼女を鍛えるKAITOさん。
初音ミクの兄が目指している道は、修羅の道。
それでも進もうとするKAITOさんは、まさに、「ミク道」を極めようとする修行者だ。


「じゃあ、僕は帰るよ。」
「お兄ちゃん。今日もありがとう。」

私達と一緒に夕食を食べた後、帰路についたKAITOさん。
彼は、ミクさんの感謝の視線を背に受けて、一歩一歩、着実に歩んで遠ざかる。

「今日もご指導ありがとうございます。ミクさんのお兄さん。」

彼の後ろ姿から伝わってきたのは、兄として大きな事をやり遂げた後の満足感。
この世に青マフラーは沢山存在するけれど、ミクさんは、このKAITOさんだけを兄と呼ぶ。
私はミクさんの隣に立ちながら、今、その理由が理解出来たような気がした。


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o 文章作品
o 作品名 = 武術家のミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2012-07-17 on Blogger


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    ミクさんが新作料理を作る時。第1楽章
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2012年4月6日金曜日

かくれんぼするミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
「おはようございます。ミクさん。」
「おはよー♪」

「何か、したい事はありますか。」
「今日は、かくれんぼするよ。」

ミクさんと私の間には、たまに行う1つの儀式がある。
「かくれんぼ」だ。
ミクさんは、その遊びを通して、自分の存在価値を確認する。
私は、その遊びを通して、彼女が初音ミクである事を再認識する。
「かくれんぼ」は、私達にとって重要な儀式なのだ。


まず最初に、壁の前に私が立って、その前にミクさんが立つ。
私は後ろを向いてから、3つ数えて声を出す。

「もーいいかい。」
「まーだだよ。」

私は最初に3つしか数えない。
なぜなら、隠れるミクさんの不安を、少しでも和(やわ)らげたいからだ。
以前、インターネット上で初音ミクを隠すお祭りがあり、
その時、ミクさんは寂しかったのだそうだ。

「もーいいかい。」
「まーだだよ。」

そして、ミクさんは、この儀式の時だけは、隠れる事が好きになる。
彼女は、自分を見つけてもらうのが好きなのだ。

「もーいいかい。」
「もーいいよ。」

鬼の使命は、ミクさんを必ず見つける事。
ミクさんが何処(どこ)に隠れていても、必ずだ。
私は、大きく後ろを振り返る。
そして、息を吸って、歌いながら歩き出す。

「ミクさん♪ ミクー♪」

大きな髪飾り。
揺れている長い髪。
じっと私を見つめている、青緑の瞳(ひとみ)。

本人は隠れているつもりかもしれないけれど、
「こっちに来てよ。」という雰囲気が、彼女の体中から溢(あふ)れている。

「ミクさん♪ ミクー♪」

私は、うずうずしながら待っている髪飾りに向かって歩く。
鬼の使命は、ミクさんを必ず見つける事。
ミクさんがどのように隠れていても、必ずだ。
私は、彼女の手前で止まり、最後のフレーズを歌い出す。

「ミクさん♪ ミクー♪」
「みくっ♪」

ミクさんが、満面の笑顔で私の前に顔を出す。
私も、笑いながら、

「ミクさん、見ーつけた♪」
「見つかっちゃった。」

ミクさんと私は、ひとしきり和(なご)んだ後に、私達が出会った頃を思い出す。
その頃のミクさんは、笑顔を見せるその奥で、心に大きな傷を負っていた。
一方で、その悲しい出来事があったからこそ、
私は初音ミクについて興味を持ち、ミクさんと出会う事が出来た。
当時の悲しみと喜びを、私達は思い出して涙ぐむ。


「それでは、今日も作曲しましょうか。」
「うん。」

私達は、曲作りへの情熱が薄れた時にこの儀式を行い、当時の心を思い出す。
そして、その後の私達は、1日中、曲作りに励むのだ。



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o 作品名 = かくれんぼするミクさん
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o 作者 = to_dk
o 初出 = 2012-04-06 on Blogger


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2011年9月24日土曜日

ミクさんが新作料理を作る時。第4楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
ミクさん探し3日目の朝、寝袋に入って寝ていた私は、KAITOさんの大きな声で目が覚めた。

「ミクー。ミクー。」

私の目に映ったのは、青白い空に青緑の長い髪。
ミクさんは、多くの荷物を抱えて、空を大きく横切っている所だった。

「ミクー。」
「ミクさーん。」

声を張り上げる私達。

「ミクー。帰ってきてくれー。」
「いえ、帰っている所ですよ。あれは。」

「ミクが帰る前に、あの巨大きのこを何とかしないと。」
「その隣にある、大きな瓶も気になりますね。」

私達が話している間に、ミクさんと食材達は見えなくなってしまった。

「ああっ、ミクがー。」
「新作料理確定ですね。」

「大きなきのこ。」
「怪しげな瓶。」

「野生ネギ。」
「正方形のさつま芋、でしょうか。」

「ミクの頭の上にあった、大きな袋の中身は何だろう。」
「分かりません。でも、大収穫だったみたいですね。」

私達は大きく溜息をついてから、これからの事を考える。

ミクさんは、あの食材達を運び終えたら、嬉々として新作料理を作り出すに違いない。
新作料理と聞いて喜んではいけない。
料理が得意では無いミクさんが、誰も見た事の無いような料理を作るのだ。
そして、此処(ここ)にいる彼と私が、得体の知れないミクさんの新作料理を「美味(おい)しく」頂く事になるのだ。

「もはや、手遅れか。」
「帰りましょうか。」

「いやだ。僕は、ここに住む。」
「ここには、葱(ねぎ)しかありませんよ。」

「葱とミクの新作料理なら、葱を選ぶよ。僕は。」

何気に酷(ひど)い事を言うKAITOさん。
もっとも、彼は此処(ここ)に留まる事は出来ない。
なぜなら、此処にはアイスクリームは無いからだ。
その事を指摘すると、彼は途端に帰る気になった。

「早く帰ろう。今すぐに。」

帰宅早々、ミクさんの新作料理を食べる事になってしまったら、私達の身と心が持たない。
到着直後は普通の料理を食べたいと願いながら、彼と私は、長い帰宅の途についた。


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o 文章作品
o 作品名 = ミクさんが新作料理を作る時。第4楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-09-24 on Blogger


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2011年9月23日金曜日

ミクさんが新作料理を作る時。第3楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
ミクさんの新作料理を阻止する為に此処(ここ)に来た、KAITOさんと私。
私達の目的は、ミクさんが不思議な食材を集め終える前にミクさんに出会い、彼女を連れて帰る事だ。
2日目の朝、KAITOさんは元気になって、開口一番にこう言った。

「今日は、この近くにある洞窟の中を調べよう。」

「他の場所は探さないのですか。」
「ミクはきっと、山の表面を調べ終わっている筈だ。それに。」

「それに?」
「ミクが今、洞窟の近くに下りていった。」

「ミクさーん。」

私と彼はリュックを背負い、走ってミクさんを追いかけた。


「はぁーっ、はぁーっ。」
「ぜーっ、ぜーっ。」

洞窟の入口に到着した私達。
しかし、ミクさんはどこにも居なかった。
少し休憩して息を整えた私は、KAITOさんに質問した。

「先に進みますか。それとも、ここで待ちますか。」
「先に進もう。ミクは他の出口を使うから。」

私達は洞窟の側を流れる川から水を汲み、ミクさんを追う準備を整えた。
そして、私達が洞窟に入ろうとすると、洞窟の片側の壁が、がらがらと崩れ落ちてきた。

「この先で、大きな蛇がミクから逃げているみたいだね。」

KAITOさんは冷静だ。
そして、ミクさんの非常識さは洞窟内でも健在のようだ。
洞窟内を進みながら、私は後ろを歩いている彼に話し掛けた。

「ミクさんの行動に詳しいですね。KAITOさん。」
「ミクがここに来る時は、僕もここに来ているからね。」

「毎回ですか?」
「ミクが危険な目に遭ったら、大変だからね。」

ミクさんが休みそうな場所を見つけて、掃除をしたり、
道端に葱を置いて、ミクさんを安全な所に誘導したり。
ミクさんのお兄さんって、意外と大変なのですね。


洞窟内を暫(しばら)く歩いていると、蝙蝠(こうもり)の集団が私達に襲い掛かってきた。

「何ですか、このコウモリは。」
「僕達は♪ 餌じゃなーい♪」

この状況下で、歌手である事を思い出して歌い出す KAITO さん。
しかし、彼が歌っている間も、私達は蝙蝠達に襲われ続けた。

「ミクのようには、いかないなあ。」

「ミクさんも歌うのですか。」
「うん。ミクが歌うと道を空けるんだよ。彼らは。」

「不思議ですね。」

ミクさんは、超音波を出す事も出来るのだろうか。
彼女の場合、「えふぇくとー」などと言いながら、一見無理な事でも実現してしまうから、恐ろしい。


更に歩くと、1匹の蛇が行く手を塞(ふさ)いでいた。

「しゃーっ。」

「やる気満々ですね。あの蛇は。」
「僕達はー♪ 敵じゃなーい♪」

また歌い出す、青マフラー。

「ミクさんも歌うのですか。」
「ミクは髪で威嚇(いかく)。」

私達は、ミクさんの真似が出来ない。
仕方が無いので、ミクさんが通らないような横道に入って、くねくね進む。


「また、道が分かれていますよ。」
「ミ、ク、は、ど、ち、ら、に、行、っ、た、か、な!」

「右ですよね。」

絶望的な手段で、ミクさんを追い求める私達。

「ヤモリですね。」
「反対方向に逃げるんだ。」

「また蛇ですね。」
「別の道を進もう。」

私達は、肌寒い洞窟を、汗をかきながら歩き回った。
そして、3回目の行き止まりから戻る途中で、私達は、通路の真ん中に据え置かれている四角の物体を発見した。

「宝箱だ。」
「こんな所にあるなんて、不自然ですね。」

「ふたを開けてみよう。」
「開けるのでしたら、慎重にお願いします。」

彼は、私の忠告を無視して、ぱかっと蓋(ふた)を開けた。
すると、箱の中から、小さなツインテールが姿を現した。

「みくー。」

「ミクだ。」
「小さなミクさんですね。」

「ミクー。僕が悪かったよー。」
「落ち着いてください。彼女は別人ですよ。」

会話をしている私達をじーっと見つめる、小さな瞳。

「おなか減ったよー。」

そこで、私は、リュックに入っている非常食の1つを、彼女の目の前に置いてみた。
彼女は宝箱に入ったまま、両手を上手に使って、むしゃむしゃと非常食を平らげる。

「可愛いなあ。」
「可愛いですね。」

KAITOさんは、小さなミクさんの求めるままに、非常食を次々と差し出した。
おなか一杯になるまで食べた彼女は、ごちそうさまの仕草をした後、しゃがんで宝箱の蓋を閉めた。

「小さなミクも、良いものだなあー。」
「ああっ、私の非常食も全部渡したのですか。」

「あのミクの目を見たら、拒否出来る訳無いだろー。」
「仕方ありませんね。」

私達は、いきなり食糧危機に陥(おちい)った。
小さなミクさん、恐るべし。


「とりあえず、食料を確保しよう。」

私達は、戻る道が分からなかったので、水の音を頼りにして前に進んだ。
そして、茸(きのこ)を発見。

「食用ですか?」
「僕達には、食べるしか選択肢が無い。そうだろう。」

私達は茸(きのこ)を炙(あぶ)って食べて、その副作用で笑い転げた。

そして、笑い転げている私達の目の前を、ミクさんが2度横切った。
けれども、彼女は私達の笑顔を見て、2回とも安心して通り過ぎていった。

ミクさーん。


私達は、笑いの発作が治まった後、洞窟内を流れる川を辿り、洞窟の外に出る事が出来た。
その日の晩は、葱(ねぎ)尽くし。
周りに生えている大きな葱を焼いて食べながら、私は今日の行動を振り返った。

とりあえず、ミクさんに出会うという、私達の第一の目標は達成した。
そして、ミクさんが私達よりも遥かに冒険に向いているという事も、理解した。
それにしても、宝箱に入った小さなミクさんは不思議な存在だ。
もしも彼女がゲーム世界の住人だったなら、史上最強のモンスターになれるに違いない。

続く


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o 文章作品
o 作品名 = ミクさんが新作料理を作る時。第3楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-09-23 on Blogger


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(2011年9月28日変更。冒頭部分の会話の繋ぎ)

2011年8月26日金曜日

ミクさんが新作料理を作る時。第2楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
まさか、朝から山登りする事になるなんて。
と思いながら、私は、脇目も振らずに歩き続けた。
隣を見ると、青いマフラーを巻いた彼も、ふらふらと歩いている。

「ミクさん、見つかりませんねー。」
「ミクは、空を飛べるからね。」
「それって、追いかける意味、あるのですか。」
「それは大丈夫。途中に、野生のネギの、群生地があるんだ。半日歩くと、追いつくよ。」

息切れ気味の私達。歩いて1時間で、この有様だ。
でも、私達は諦めない。彼と私の平穏な未来を守る為に。


それから、黙々と半日間、歩き続けた私達。
ようやく、ネギの群生地を見つけたけれど、もう、私達の足は限界だ。
彼と私は、途切れ途切れに言葉を交わす。

「ミクは、多分、休憩中。僕達も、休憩、しよう。」
「そう、ですね。あの、木の下で、休みま、しょう。」

私達は、少し高い場所に移動する。
休んでいる間に、ミクさんが見つかるかもしれないからだ。
そして、お互い、木にもたれて足を伸ばす。

ああ、気持ち良い。

足は重くて動かないけれど、座っているだけで、私は幸せに満ちてくる。
隣に座っている彼も、アイスクリームを食べる事も忘れて、この快感に浸っていた。


しばらく休んで、口だけは復活した私達。

「それにしても、ミクは見つからないなあ。」
「ミクさんは朝から此処に居ますから、どこかに移動したのでしょう。」
「この僕でさえ、疲れて動けないというのに。」
「あなたの場合は、首に巻いている青いマフラーが原因だと思いますよ。」
「これは、僕のポリシーだ。」

昨日はマフラーを巻いていなかったのに、炎天下の今日はマフラーに拘るKAITOさん。
ひょっとして、あなたは、太陽と戦っているのでしょうか。

「ところで、次にミクさんの行きそうな場所は、どこですか。」

私が質問している間に、いびきをかきだした青マフラー。
私も眠りたかったけれど、2人とも眠ってしまっては意味が無い。
私は目を大きく開いて、長い髪のシルエットを探し続けた。


その後は日が暮れるまで、私達はそこに居た。
時々、足を伸ばしてストレッチとマッサージ。
暗くなったら彼が起きて来たので、一緒に夕食を食べて寝た。


続く


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o 文章作品
o 作品名 = ミクさんが新作料理を作る時。第2楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-26 on Blogger


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(2011年9月17日変更。タイトル変更)
(2011年8月26日変更。後半部分の言い回しを見直し)

2011年8月20日土曜日

ミクさんが新作料理を作る時。第1楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
今日の朝は、ミクさんの怒声で始まった。

「お兄ちゃんの、ばかー!」

玄関で大きな声がしたと思ったら、ミクさんが外に飛び出していった。

「ミクー。待ってくれー。」

ミクさんと入れ替わりに残っているのは、ミクさんよりも背の高い青年。彼女が唯一、兄と呼ぶ存在だ。
私は冷蔵庫から棒状のアイスクリームを取り出した後、情けない声を出している彼に声を掛けた。

「またミクさんと喧嘩をしたのですか。」
「ミクがーっ、ミクがーっ。」

肩を大きく揺さぶられる私。
普段爽やかな言動をする彼だけれど、ミクさんと仲違いすると、いつも私に頼るのだ。

「とりあえず、アイスクリームでも食べて、落ち着いて下さい。」

意識が無くなる前に、彼の口に棒アイスをねじ込む私。
そして、棒アイスを食べて落ち着いた彼は、今日も爽やかな顔でこう言った。

「これから一緒に、ミクを探しに行こう。あの山へ。」

やっぱり今日は、作曲活動出来ないのですね。ミクさん。
空に向かって嘆(なげ)きたい気持ちを堪(こら)えて、私は彼の話を聞く事にした。


「今日は何が原因なのですか。」
「ミクの料理を味見して、アイス味が足りないね、と言ったんだ。」
「ミクさんは、それくらいでは怒りませんよ。」
「ミクが『アイス味って何なの。』って質問してきたから、『子供のお前には分からないよ。』って答えたんだ。」

いえ、私にも分からないんですけれど。アイス味。
私は、冷蔵庫から麦茶を取り出し、自分のコップに注いだ。

「その後は?」
「ミクが『私は子供じゃないよ。』って言ってきたから、『ネギを凍らせてもアイスにはならないよ。』って答えたんだ。」

台所に残っているお鍋を見る限り、ミクさんが作っていたのは暖かい料理だ。
大方、売り言葉に買い言葉で、口論がエスカレートしたのだろう。

「でも、どうして、ミクさんがあの山に行くと分かったのですか。」
「すごいソースを探すと言っていたからさ。」
「すごいソース?」
「あの山には、ネギ色をした伝説のソースが採(と)れるという言い伝えがあるからね。」

あれっ、待てよ。
その話は、私もミクさんから聞いた事がある。

「究極のネギ味、などと評される、噂のあれですか。」
「そう。それを口にした者は、天国を見る事が出来るという噂だ。」
「なんだか、嫌な予感がしますね。」
「うん、僕もそう思う。」

私達は、2人揃って溜息をついた。
頑固なミクさんは、その調味料を見つけるまで、自分からこの家に戻ってくる事は無いだろう。
しかも、彼女がその調味料を見つけたら、彼と私が試食する事になるのは目に見えている。

「だから、ミクがソースを発見する前に、僕達がミクを見つけて説得するんだ。」
「そうしましょう。」

彼に全て任せると、ミクさんを更に怒らせそうで心配だ。
私は、2つのリュックに食料と寝袋を詰め込み、1つを彼に渡した。

「食料は3日分用意しました。」
「アイスが無いよ。」
「途中で溶けてしまいますよ。」
「大丈夫、携帯用冷凍庫を持ってきたから。」

そのような物をいつも持ち歩いているのですか。KAITOさん。
とりあえず、冷蔵庫に入っているアイスクリームを、彼の持つ携帯用冷凍庫に押し込んだ。

「飲み水はどうしますか。」
「必要なのは1日分。後は現地調達出来るよ。」

ビニール袋とコンロと水筒と、、、
私達は用意を整え、ミクさんが出かけた山を目指して出発した。


続く


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o 作品名 = ミクさんが新作料理を作る時。第1楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-20 on Blogger


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(2011年9月17日変更。タイトル変更)
(2011年8月20日変更。タイトルと接続詞訂正)

リン警官とミクさん達。第6楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
私は、開いているドアをノックして、目の前の人物に向かって礼をする。

「失礼します。」

リン警官は、私を見るなり、こう言った。

「ミク代表。お疲れ様です。」

「この姿を見て、初音ミクって良く分かりますね。」
「初音ミク見習いとして、あなたは登録されていますから。」

よりによって、警察にも初音ミクで登録されていたのか。
でも、見習いで本当に良かった。
あの露出度の高い初音ミク公式衣装を着る事になったら、特に真冬は寒過ぎる。

「それは兎も角として。」

私に椅子に座るように促し、リン警官は、本来の業務に戻る。

「今日はもう、大人しくしてね。めっ。」

彼女のお説教が始まった。
ああ、叱っている時の彼女のリボンも、可愛いかもしれません。


お説教が終わると、リン警官は、手作りのカップケーキを私にくれた。

「ありがとうございます。リンさん。」
「ミク達の事、これからも宜しくお願いします。」

いえ、お願いされても困るのですが。
リン警官と握手した後、私は軽くお辞儀して、無事、初音ミクとしての仕事を全(まっと)うした。


リン警官の部屋から出てきた私の目の前には、ミクさん達が並んで待っていた。
私を発見した途端、安心してカップケーキを食べ始めるミクさん達。

「これで、初音ミクの全ての任務完了です。」
「逮捕の協力者も、全員貰えるんだよー。」
「リンちゃん、LOVE。」
「美味しいねー。」

私も一口食べてみた。

美味しい。ミクさん達には悪いけれど、リン警官の料理の腕は格別だ。
「警官を辞めて、ミクさん達に料理を教えて下さい。」と懇願(こんがん)したくなる程の腕前だ。
私は、リン警官に感謝しながらカップケーキを食べ終わり、
この界隈に逮捕者が溢れている理由を理解した。

あまり言いたくないのですが、幸せ過ぎます。リン警官。

私は、ようやく緊張から解き放たれて、リン警官の部屋に入る前の事を思い出す。
私が入室する前に居た場所を振り返ると、泣いていた彼の傍(そば)には、彼が愛する女性の姿があった。
彼女は、リン警官の姿で、

「私の後輩に迷惑をかけたら、承知しないからね。」

リン警官ファンクラブの代表者を引きずりながら、説教部屋に入っていった。


夕方になる頃には、リン警官のお説教が全て終わり、私達のリン警官見学ツアーは解散となった。
夕日に染まる、ミクさん達のシルエット。
取り残されたミクさんと私は、改めて、リン警官に挨拶した。

「お疲れ様でした。カップケーキ、美味しかったです。」
「リンちゃん。また来るね♪」

今度、また此処(ここ)に来た時には、私は喜んでリン警官に逮捕される事だろう。
帰り道には、次回の見学ツアーに合わせて早速作曲の予定を空けておく、駄目なミクさんと私が居た。


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o 作品名 = リン警官とミクさん達。第6楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-20 on Blogger


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(2011年8月22日変更。見学ツアーの前の語句を訂正)

リン警官とミクさん達。第5楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
私は逃亡者の列に加わり、リン警官に逮捕される事に成功した。
縄に繋がれる事もなく、番号札を配られて、ある場所に移動するだけだ。
そして、逮捕された私の目の前には、信じられない光景が広がっていた。

「今日はもう、大人しくしてね。めっ。」

専用の部屋に、1人ずつ呼んでお説教するリン警官。
その部屋にはドアがあるだけで壁はなく、話している内容は周りに筒抜けだ。
お説教が終わると、リン警官は逮捕者にお菓子をあげて、逮捕者はリン警官に握手を求める。
近くの交番に居るリン警官も応援に来ていて、あちらこちらで、「めっ。」という声が聞こえる。

「スタンプが欲しい方は、こちらに並んで下さい。」

お説教が終わって出てくると、もう1人のリン警官が、日替わりの特製スタンプを押してくれる。もちろん、リン警官の握手付きだ。
スタンプを沢山集めて、満足げに眺めている青マフラー。
彼は、「リン警官に踏まれ隊」のメンバーだ。
彼に話を聞くと、最も伝統のある「リン警官ファンクラブ」に入会する為には、100回捕まる必要があるらしい。

「リボンの良さが分かってきたから、100回捕まる頃には、僕もファンクラブに入会するかもしれないよ。」

その右隣に居るのは、集団の先頭で大きな旗を掲げていた、黄色いつんつん頭。
彼は、リン警官ファンクラブの代表者だ。

「はじめまして。旗持ちお疲れ様でした。」

私は、黄色い頭の彼にも声を掛けた。

「はじめまして。初音ミクの代表者。」
「なぜ、分かるのですか。」
「人間を此処(ここ)に送るなんて発想、ミク以外には無理だから。」

まあ、初音ミクのする事ですから。
と、お互いが納得出来てしまう所が恐ろしい。


「そう言えば、リン警官ファンクラブの事で、1つお聞きしたい事があるのですが。」
「何でもどうぞ。将来の入会者。」

私は、彼の好意に甘えて、知りたかった事を質問してみた。

「伝統あるファンクラブの代表って、どのように決まるのですか。」
「うちの場合は、ファン活動の実績と、リン警官に相応しい曲を作る事かなあ。」

「曲ですか?」
「代表の選抜前に、彼女に一番相応しい曲を作って歌う、コンテストがあるんだ。」

「リン警官のテーマ曲ですね。」
「僕は、以前、ファンが高じて、当時のリン警官と付き合っていた事がある。他の候補者よりも有利だったんだ。」

「それは、良かったですね。」
「でも、リンは歌手になっちゃって、、、」

彼の声が小さくなる。

「もう、リン警官の制服を着てくれなくなったんだ。うわーん。」

泣き出してしまった。

彼が好きになったリン警官は、今でも彼の傍(そば)に居る。
でも、歌手になった今は、リン警官の服を着てくれなくて、彼女を見る度に悲しみに溢(あふ)れているのだそうだ。
彼女の事が大好きだけれど、警官の姿も、同じくらい大好きな彼。
毎日心が張り裂けそうで、リン警官の熱狂的なファン活動で、ようやく心の平静を保つ彼。
リン警官ファンクラブの歴代の代表は、皆、そのような過去の持ち主で、
そのような彼らが奏でる曲は、リン警官ファン達の心に響くのだ。

重い話を聞いた後、ついに私の番が来た。

「393番のミクさん、どうぞ。」
「行ってきます。」

私は、膝に顔を埋めてしまった彼の背に、優しく声を掛けてから、リン警官の元へと向かった。


(続く)


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o 作品名 = リン警官とミクさん達。第5楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-20 on Blogger


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(2011年8月21日変更。初音ミクの呼び方を一箇所訂正)

リン警官とミクさん達。第4楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
私は、テーブルの汚れた所をふきんで拭きながら、この先の出来事を予想する。
荒ぶる髪の犠牲者は何人位になるのだろうか。
そして、ミクさん達が出かけた辺りに視線を向けた。
私の目に映るのは、続々とリン警官の元を目指す、各集団の大移動。
あれっ。

私がふきんで拭く前は、リン警官達が逃亡者達を追いかけていた筈だ。
今は、リン警官達が歩く後ろを逃亡者達が追いかける、不思議な展開になっている。
遠くから聞こえる、「もうすぐおやつの時間だよー」という高いミク声。

逃亡者全員を揺るがす程の力を持つ、おやつの時間。これから、何が起こるのだろうか。
予想外の展開の早さに驚いた私は、急いでテーブルを掃除した。


私が最後の椅子を並び終える頃には、リン警官の支援活動を終えたミクさん達が、続々と戻ってきた。

「議長のミクさん。お疲れ様です。」
「私は全く疲れていません。それよりも、深刻な問題が発生しました。」

一人のミクさんが、大きな紙に井戸の絵を描く。
テーブルの上には、お皿の代わりに葱(ねぎ)が並べられ、議長のミクさんが、臨時の井戸端会議を宣言した。
議題は、「リン警官に逮捕される方法」
議長のミクさんが、簡単に経緯を述べる。

「リン警官は、私達初音ミクを、1人も逮捕しませんでした。どうしたら良いか、急いで考えましょう。」

周囲に居るミクさん達が、一斉に意見を述べる。

「逮捕の列に並んでも、リンちゃんは逮捕してくれなかったよ。ぷんぷん。」
「初音ミクだけ捕まらないなんて、不思議過ぎ。」
「なぜだろー。」

考え込むミクさん達。
逮捕に協力したミクさん達が、リン警官に逮捕される為に会議を開く。
しかも、悪い事をせずに捕まろうとするなんて、私には全く理解出来ない。

「えーと、逮捕される必要、あるのですか?」

「他のVOCALOIDが捕まっているのに、初音ミクが捕まらない。それは、初音ミクの名折れです。」
「そうだ。そうだ。」
「むしろ、初音ミクの恥。」
「他のミク達に、申し訳ないんだよー。」

私の説明にも、納得しないミクさん達。
ミクさん達の常識は、私には良く分からない。

リン警官の味方になるのが好きなのに、リン警官に逮捕されたい彼女達。
リン警官の対応を見る限り、ミクさん達の常識は、VOCALOID界でも非常識。
しかも、毎回言い争いになるとの事なので、リン警官も大変だ。


「では、リン警官に捕まる為の条件ってなんですか。」

「リンちゃんの列に並ぶ事。」
「私、試したよ。」
「後は、リンに協力していない事、かなあ。」

その会話を聞いていた議長のミクさんが、唐突に私を指名する。

「次はあなたの出番です。」

議長のミクさんの一言で、全てのミクさんの視線が私に集まった。

「「じー。」」

声に出さなくても分かりますから。

「私はこれから何をするのですか。」
「初音ミク代表として、あの列に並ぶのです。」

「あの列って、逮捕される人達の列ですよね。」
「その通りです。リン警官に協力しなかったあなたなら、きっと捕まる事が出来る筈です。」

議長のミクさんは、このような時にも冷静な洞察力を発揮する。
私達の会話を聞いていたミクさん達も、全員が納得顔で頷いた。

「このままだと、他の初音ミクに顔向けが出来ないんだよ。」
「そして、あなたは初音ミク見習い。」
「私が保護者。えっへん。」

ここでも胸を張る、自称保護者のミクさん。

「そういえば、そうでしたね。。。」


人間の世界では、警察に捕まる事は不名誉な事とされているけれど、この世界では異なるようだ。
大勢が喜んで捕まる位なので、そうそう悪い事が起こるとも思えない。
何よりも、新しい経験は、今後の私達の作曲活動の糧になるかもしれない。

結局、私は、ミクさん達の希望通り、リン警官に捕まる事にした。


(続く)


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o 作品名 = リン警官とミクさん達。第4楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-20 on Blogger


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2011年8月3日水曜日

指導するミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
今日のミクさんは、朝から何かの使命に燃えていた。

「ミクさん。おはようございます。」
「おはよー♪」

きりりと引き締まっている目で、歌うように挨拶を返すミクさん。
彼女が朝から張り切っていると言う事は、これから何かが始まるという事だ。

「何か、したい事はありますか?」

私が質問すると、ミクさんはチラシを渡してくれた。

-----------------
『今日はミクの日。お互いに教えあう日です。』
。。。

ミクだよ。井戸端会議で決まったよ。
ミクです。よろしくお願いします。
人間のしきたりに合わせたのよ。私もミクよ。
今日はお空を飛ぼうかな。ミク
-----------------

このチラシの中にある「井戸端会議」は、近所のミクさん達が集まる真面目な会議だ。
この会議で決まった内容は、ミクさん達の将来にとって重要な事柄が多い。

「今日は、私の日。なるべく沢山、私に置き換えてね。」
「ミクさんの誕生日は、8月31日でしたよね。」
「誕生日じゃなくて、私の日。これから、歌詞を作る練習をするんだよ。」

なるほど。作詞力の強化ですか。

「運動する人は、準備運動していたよ。だから、作詞する時は、準備作詞するんだよ。」

準備作詞という言葉は私にとって初耳だったけれど、ミクさんの言いたい事は、なんとなく理解出来る。
ミクさん達は、作詞者に優れた歌詞を書いてもらう目的で、作詞環境を改善する事を考えたのだろう。

私は1度、深呼吸をする。
初音ミクを支える作詞者の一人として、ミクさん達の期待に応えてみせる。
私は耳を澄まして、ミクさんが繰り出す課題に備えた。


「起き上がる時は?」
「みくっ」

「びっくりした時は?」
「みっくりしたよ」

ミクさんは満足した表情を浮かべながら、次々と課題を投げ掛ける。
どうやら、私の解答の方向性は、間違っていなかったようだ。

「蝉(せみ)が鳴く時は?」
「みーくみーく 、みーくっ、みみみ」

「おなかが減った時は?」
「みぃくぅーぅー。」

「悲しくなった時は?」
「みくみくみく」

「私、そんな風に泣かないよ。きっと。」
「むむっ。」

絶対の自信があった解答が不正解となり、
私の心の中で積み上がっていた座布団が0になる。

「難しいですね。この問題。」
私は頭を抱えながら、こう言った。

「難しくないと、練習にならないんだよ。」
上機嫌に答えるミクさん。

私は、しばらくの間考えてみたけれど、
みくみく泣きよりもミクさんに相応しい泣き声を、見つける事は出来なかった。


「降参です。模範解答を教えて下さい。」

私は両手を上げて、こう言った。

「あれっ。うーんと、ねぇー。」

ミクさんは、考えながら、近くにあったコードを指に巻き出した。

「えーっとー。」

ミクさんは、彼女に訪れる毎日を、精一杯頑張って生きてきた。
だから、きっと、冷静でない時の彼女自身の行動については、ミクさんはあまり覚えていないのだろう。
私は、ミクさんの返事を待ちながら、思いついた歌詞をパソコンに入力し始めた。

「んーとー。」

最近、作曲の時に、作曲ソフトの動きが重くなった。
買い替え予算は無いけれど、そろそろ、新しいパソコンが必要かなあ。
私が、ミクさんの返事を待つことを忘れて、パソコンのキーボードを熱心に叩き出した頃に、

プチッ。

入力していた画面が、真っ暗になった。

私がこれまでに入力した歌詞は、この世のどこにも残っていない。
私の目の前も、真っ暗になった。


数秒後、私は創作活動の意欲をかろうじて取り戻し、電源喪失の原因調査を開始する。

「んーとっねー。」

ミクさんは、指にケーブルを巻きつけたまま、まだ考え事をしていた。
パソコンの電源ボタンを押しても、何の反応も起こらない。
部屋の明かりは付いているから、停電でもない様だ。

ついに、パソコンが壊れたか。
パソコンを修理する必要があるけれど、保障期間は過ぎているから有料だ。
そもそも、ハードディスクを入れ替えると、ミクさんが消えたりはしないだろうか。

私の頭の中を、悲観的な情報が占有した。
けれども私は、それらの情報を、一旦隅(すみ)に追いやった。
まだ、パソコンが壊れていない可能性、コード類が外れているケースが残っているからだ。

パソコンの背面を見たけれど、パソコンに接続しているコードは外れていない。
パソコンからディスプレイに接続しているコードも外れていない。
私は念の為、椅子を引いて、コンセントの方に移動する。
あれっ、パソコンの電源プラグが外れている。しかも、くねくねと動いている。
そういえば、以前にも1度、パソコンの電源プラグが勝手に外れた事があったっけ。

私は視線を横に動かす。
そして、動く電源プラグの動力源を見つけた。
動力源は、ミクさんだ。。。
ミクさんは、器用にも、パソコンの電源ケーブルを足に巻いていた。

「んー、とー。」

まだ悩んでいる、パソコンの電源を切断した張本人。
私は、彼女の顔をじっと見つめる。
それに気付いたミクさんは、私を見て、何事も無かったように、こう言った。

「御用はなあに。」

「みくみくみく」
「だから、私は、そんな風には泣かないよ。」

私は、パソコンが壊れなかった事に感謝しつつ、創作活動における一つの課題を手に入れた。
私達は、優れた歌詞を作る前に、ミクさんの足癖について本格的に取り組む必要がありそうだ。


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o 作品名 = 指導するミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-03 on Blogger


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(2011年8月4日変更。語句を2箇所訂正)

2011年6月3日金曜日

リン警官とミクさん達。第3楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
「リン警官に踏まれ隊」のパフォーマンスは熱気を帯びて、更に舞台を盛り上げた。

「リン警官に♪ 踏まれたーい♪」
「「リン警官に♪♪ 踏まれたーい♪♪」」

この掛け声さえ無ければ、手放しで褒める事が出来るのに。

「そう思いませんか。ミクさん。」
「リンちゃん LOVE♪」

私の隣に居るミクさんは、応援する時も全力だ。
私の声が耳に入らない位、力を入れて声援を送っている。
そして、曲の区切りに差し掛かり、私がミルク休憩を提案しようとしたその時に、
曲に乗せて少年声の合唱が割り込んだ。


「聞き捨てならないなー♪あー♪」
「「なー♪あー♪」」

声は建物にこだまする。
そして、こだまと共に、右側の建物から別の集団が姿を現した。

旗を先頭にして立つ、黄色い頭の少年達。
旗には大きなリボンのマーク。
そして、旗に続く、白いリボンの大海原。
少年達は、リボンを天に掲げて、歌いながら行進する。
旗に書かれた言葉は、「リン警官ファンクラブ ~ リン警官に叱られたい」

「リン警官。踏まれるだけなら、誰でも出来る♪」
「「リン警官。踏まれるだけなら、誰でも出来る♪♪」」

同じ言葉を異なる旋律で追いかける。
これは、輪唱ではなく、カノンと呼ばれる形式だ。
リン警官の本名は鏡音リン。鏡像のように旋律を展開させるその曲は、まさに彼女にぴったりだ。

「刮目(かつもく)せよ。踏まれる時の、彼女の頭♪」
「「刮目せよ。踏まれる時の、彼女の頭♪♪」」

一人一人が声の高さを微妙に変えて、遠くまで伝わる声を作り出す。
その声をコーラスで重ねて、うねる様に響かせる。

「注目は、怒った時のリボンの動き♪」
「「注目は、怒った時のリボンの動き♪♪」」

彼らの高音は、力強さと崇高(すうこう)さを併せ持ち、
彼らの固い発音は、リン警官の生真面目(きまじめ)な性格を周囲に伝える。

「そして我らのご褒美は、叱る姿のリン警官♪」
「「そして我らのご褒美は、叱る姿のリン警官♪♪」」

音で彼女を理解させ、言葉で信念を主張する。
彼らは、リン警官を音のキャンバスで表現する、芸術家の集団だ。

「この曲には、伝統と高い格式を感じますね。ミクさん。」
「最古参だから、当然よ。」
「なるほど。」

あれっ。ミクさんの話し方に違和感がある。
横を見ると、井戸端会議の常連。物知りのミクさんだ。

「今の代表は10代目。歴代、歌手の鏡音レンが代表を務(つと)めているのよ。」

彼らは、いつも隣に居る彼女に、嫌われてしまったのだろうか。
少し興味はあったけれど、今、気になるのは、入れ替わる前のミクさんの行方。
彼女は、何処に行ったのだろうか。

周りを見渡すと、先ほどまで隣で声援を送っていたミクさん発見。
彼女は机を並べて作ったテーブルで、ミルクをゆっくり飲んでいた。
ミクさん達に囲まれていても、彼女の事なら仕草で分かる。
次の声援に向けて、喉を休めているのですね。ミクさん。


「リン警官ファンクラブ」の割り込み演奏が終わると、2つの旗がゆっくりと近づき、歌い合いが始まった。

左からは、「リン警官に、踏まれたい♪」
右からは、「リン警官に、叱られたい♪」

それぞれが交互に、曲に合わせて歌い合っているのだけれど、誰かがタイミングを間違えた。

「リン警官に、踏まれたい♪」
「間違えるなー♪」
「なんだとー♪」

そして、2つの陣営の旗達は交錯し、2つの集団は1つに交じり合う。
「ぼかーん」。派手に吹き飛ぶ青マフラー。
旗の周辺一帯で、派手な喧嘩が始まった。

「リン警官に、踏まれたーい♪」
「リン警官に、叱られたーい♪」

歌いながら 2つの隊は入り乱れ、各所で 1対1の戦いが始まった。
「ドン」と太鼓を叩く音が鳴って、横に吹き飛ぶ青マフラー。
「ドドン」と、バスドラムが鳴り響き、逆に吹き飛ぶ黄色い頭。
正に乱闘だ。


私は、彼らの行動に目を見張る。
乱闘に対してではない。
ミクさん達の目の前で暴れる事が、どんなに無謀な事なのか、彼らは全然分かっていない。
どうすれば、ミクさん達が動く前に、彼らの乱闘を止める事が出来るのだろうか。
私が、過去の記憶を総動員して解決策を考えている時に、

「そのお皿1つ頂戴。」「ミルクおかわりー。」

隣のミクさん達は、呑気に食事を始めた。
ミクさん達は基本的におせっかいで、常識外れの戦闘力も持っている。
なのに今、彼女達は動かない。最悪の事態は避ける事が出来たけれど、理由はいったい何なのだ。

私は、正面をじっと観察してみる。
良く見ると、片方が殴ったふりをして、相手が自分で後ろに飛んでいた。
殴り合いの音は、腕のシンセで鳴らしているようだ。
吹き飛ばされた相手は、数秒倒れた後に、更に元気に立ち上がる。

中には、派手に落下する青年も居たけれど、下にはネットが張ってある。
これだけ派手に暴れているのに、誰も怪我をしていない。
しかも、時々喧嘩を止めて、リン警官をじっと見つめる。

なんだろう。この、1分前の悲壮感が虚(むな)しくなるような展開は。
ミクさん達が食事したくなる気持ちも、今の私には良く分かる。
私も彼女達の待つテーブルに向かい、安全そうな食べ物を選んで食べた。

ところで、初音ミクは料理下手と思われがちだけれど、それは大きな間違いだ。
この世には、料理が上手なミクさんも多数存在する。
但し、味付けが致命的に変わっている所が、玉に瑕。
もし、ミクさんの料理を食べる機会があったなら、
葱っぽい色の混じっていない食べ物を選ぶ事を、私は強くおすすめする。


私が食事を始めてから暫(しばら)く経った頃、騒ぎ声が静まった。
じっと立っていたリン警官が、高台へと移動したのだ。
喧嘩している全員が手を止めて、リン警官をじっと見つめる。
そして、辺りが一斉に静かになった瞬間、リン警官の大声が、建物に響く。

「私達は、この周囲を包囲した。争いを止めない者は、全員、逮捕する。」

建物のあちらこちらから、隠れていたリン警官が登場する。
その瞬間、天国に居るかのような歓喜の声が、彼女達を包み込んだ。

「「リン警官♪♪ リン警官♪♪」」

リン警官達が、それぞれ単身で突入する。
逃げる彼らは、幸せそうな笑顔を浮かべて走る。
逃げ遅れた数人が捕まる。
彼らは反撃もせず、素直に交番前に移動する。

移動が終わったら第2弾。
簡単に外に出る事が出来るのに、誰も包囲網の外には逃げない。
それどころか、リン警官達が突入すると、取り締まられる方の旗と人数が倍以上に膨れ上がった。

「リン警官親衛隊」
「リン警官写真部」
「リン警官のリボンFC」

他にも旗は沢山あるけれど、切りが無いので省略する。
あっ、旗が1本倒れました。ミクさん。


ミクさん達は、相変わらず、食事の最中だ。
変わった味の食べ物から順に無くなっていくので、ミクさん達の手が進まない食べ物を私が食べる。
うん。美味しい。

そして、料理を綺麗に平らげたミクさん達は、全員で今の状況を分析した。

「残り、半分くらいかなあ。」
「おなか減った。」
「もうすぐ、おやつの時間だよ。」

それを聞いたミクさん達が、一斉に立ち上がる。

「「出番だね。」」

彼女達の声が、1つになった。
そして、周りに熱い視線を注がれた議長のミクさんが、活動開始の第一声。

「もうすぐ、おやつの時間です。私達も出かけましょう♪」
「「出かけましょう♪♪」」

遂に、ミクさん達が動き出した。
しかも、議長のミクさんが先頭だ。
目標はおそらく、逃げ回っている集団の制圧だ。
一斉に狙いを定めて走り出す、青緑の実力者達。
あれだけ数の多い集団も、今の彼女達なら十数分で制圧出来る。

「おやつの時間、恐るべし」

私はそう呟いた後、テーブルの後片付けを始めた。


(続く)


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(2011年8月20日変更。一箇所「達」が抜けていたので訂正)
(2011年6月4日変更。第一声の所を表現見直し)
(2011年6月3日変更。使用語句の微調節)

2011年5月19日木曜日

ヨーグルトの目をしたミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
私が朝の挨拶をする時、ミクさんは、毎日異なる表情を見せる。
井戸端会議の無い今日は、窓の外を眺めながら、物思いに耽っていた。

「おはようございます。ミクさん。」
「おはよー。」

「何か悩み事ですか。」
「たまには、サイドテールにしてみようかなあ。」
「そういえば、他の髪型にしたミクさんって、見た事がありませんね。」
「だって、2つに分けた方が便利だし。」

確かにそうだ。
ミクさんは、手よりも髪の方が器用なので、1房よりも2房の方が便利なのだ。
とはいえ、たまには違ったお洒落もしてみたいですよね。ミクさん。

「少し試してみましょうか。」
「どうするの?」
「髪の片方持ちますね。」
「わくわく♪」

ミクさんの髪の房は、私の腕には抱えきれなかった。
そこで私は、大きな袋の中に、ミクさんの髪を片方入れてみた。
袋の端に手をかけて、私は袋を持ち上げた。


「準備出来ました。」
「歩いてみるね。」

ミクさんが歩くと共に、私も歩く。
動きがぴったり合った。まるで、ワルツを踊っているみたいだ。
と私が感心している間に、ミクさん、よろける。

ぺし。
髪で叩かれてしまった。


「うまく歩けない。」
「もう一度試してみますか。」
「うん。」

髪を袋に入れる。少し歩く。ミクさんよろける。ぺし。
かれこれ、20回くらい繰り返す。

原因は色々ありそうだけれど、
そもそも、3拍子で歩く所が根本的に変だ。
私はそれを指摘したけれど、ミクさん本人は良く分かっていないみたいだ。
空を飛んだりする反面、根本的な所で不器用なミクさん。
彼女の動きを見る限り、ツインテールと一体化しているとしか思えない。

「続きは明日にしませんか。」
「まだ、歩けるよ。」

ミクさんは、何を隠そう、努力家だ。
彼女が一度何かを決意すると、誰かが止めようとしても、なかなか止める事が出来ない。
彼女は、その後 39回よろめいて、私がミルク休憩を提案した所でようやく中断してくれた。


「ミルクを取ってきますね。」

私は、休憩出来た事に安心し、冷蔵庫に向かった。
ミクさんは、コップを並べていた。
この休憩が終わった頃には、彼女はきっと、別の事を考えている事だろう。
私は、冷蔵庫からミルクの瓶を取り出し、テーブルの方に顔を向けた。
そして、ミクさんの姿を見た私は、全身が石像のように固まった。

私の目は、こう告げる。危険だ。ヨーグルトは非常に危険だ。
ミルクがヨーグルトになったのではない。
休憩中のミクさんの目が、ヨーグルトのようになっている。
そして、あの目が輝きだすと、目的を達成するまでの間、ミクさんの行動は止まらなくなるのだ。


私は、ミルクの瓶を持って、ミクさんの居るテーブルの前に戻った。
そして、ミルクを注ぐ前に深呼吸して、頭の中を整理する。

ミクさんの目の前には、2つのコップが並んでいる。
そして、この休憩中は、ミクさんがリラックス状態になる時が必ず来る。
これから、私は今日の残りの時間を賭けて、運命の女神と勝負する。
下手をすると、明日の運命もこの瞬間に決まってしまう。
私は一度、目を閉じて、今のミクさんの表情を私の脳裏に焼き付けた。


私はゆっくりと目を開き、ミクさんのコップにミルクを注ぐ。
ミクさんは動かない。

私は、自分のコップにもミルクを注ぐ。
ミクさんは、まだ動かない。

私は、ミルクの瓶をテーブルに置き、自分の席に着く。

「どうぞ。」
「いただきます。」

ミクさんが1口飲む。
ミクさんの表情に変化は無い。

ミクさんが2口飲む。
彼女の表情が少し緩む。後少しだ。

ミクさんが3口目を飲もうとした所で、彼女は私に顔を向ける。

「悩み事?」

ミクさんに助け舟を出されてしまった。

「ええ。昨日の曲についてです。」
「私、相談に乗るよ。」
「実は、歌う時のイメージ色を黒にする事を考えているのですけれど。」

私は、新曲の歌い方について、思いついたアイデアを語った。
ミクさんは、そのアイデアに反論し、
彼女がミルクを飲み終わった頃には、昨日の作曲活動の続きをする事になっていた。


ミルク休憩が終わる頃、私はミクさんに関する1つの法則を手に入れた。
冷静に考えれば、ミクさんの暴走を止める事は、簡単な事だったのだ。
彼女にとって、歌う事は、他の何よりも優先順位が高い。
だから、「ミルク休憩に持ち込み」「歌う事に関する話題を持ち出す」。
それだけで、ミクさんを普通の状態に戻す事が出来るのだ。

私は、この法則を「ヨーグルトの法則」と呼ぶ事にした。
何時でも真面目なミクさんが止まらなくなってしまった時の、私達の切り札だ。
きっと、私の知らない所で、ミクさんが苦労している事もあるのだろうなあ。
私は、コップを片付けるミクさんの姿を眺めながら、私自身に向かって苦笑した。


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o 文章作品
o 作品名 = ヨーグルトの目をしたミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-05-19 on Blogger


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    > リン警官とミクさん達。第1楽章
    分身するミクさん
    出荷数とミクさん達
(2011年5月19日追加。脳裏に焼き付ける描写)

2011年5月5日木曜日

9 (Nine) - 青い私.

青い私
私は空を飛ぶ為に、
ずっと今まで生きてきた。

誰もが無理だというけれど、
いつも空の夢を見て、
私の心は雲の上。


私は空を飛ぶ為に、
ずっと今まで耐えてきた。

誰もが駄目だというけれど、
いつも足元、地面を見つめ、
私の貯え、海の底。


この足元に広がる景色。
吹き上げる強い風。

私は今、空を飛ぶ。
私は今、生きている。


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o 文章作品
o 作品名 = 9 (Nine)
o 分類 = 青い私
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2010-05-05 on Blogger


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    > お化けの明日
    出会い

確かなお碗 - 赤い私.

赤い私
小さい時の、確かな思い。お碗を眺めて思い出す。

大好きだった、砂糖の味覚。大好きだった、卵の白身。
小さい時の幸せは、今では、もう、覚えていない。

嫌いだった粒餡(つぶあん)に、大嫌いな、豆ご飯。
食べても食べても無くならない、大根のお味噌汁。
かつての恐怖の食べ物を、今では平気で食べている。

確かな思いは零(こぼ)れ落ち、お碗に残るは僅(わず)かな思い。
違和感のある建物の中、確かに私はそこに居た。


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o 文章作品
o 作品名 = 確かなお碗
o 分類 = 赤い私
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-05-05 on Blogger


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2011年5月3日火曜日

話さないミクさん - ミクさんの隣

ミクさんの隣
変だ。
ミクさんが変だ。

変といえば、ミクさんが此処に居る事自体が変だけれど、それは棚に上げておく。
作曲を始めてからというものの、ミクさんは、歌う時以外に一言も話さないのだ。

私は今日の出来事を振り返る。

「ミクさん。おはようございます。」
「おはよー。」
「早速ですが、作曲を手伝ってもらえませんか。」
「うん♪」

そして、3時間程度歌ってもらった所だ。
質問したら頷くけれど、歌以外の声は一言も発していない。


「少し休憩しましょうか。」

私は内心不安だったけれど、なるべく普通に声を掛けた。
こくっ。ミクさんが軽く頷いた。

「とりあえず、飲み物を持ってきます。」

冷蔵庫には麦茶しか入っていない。ミクさんのお口に合うだろうか。
そう思いながら冷蔵庫を開けると、見覚えの無い瓶が入っていた。

「これ。ミクさんのですか。」

こくり。ミクさんは頭で返事する。
どうやら、ミクさんが持ってきた飲み物のようだ。

ミクさんに麦茶を飲ませて、さらに問題が起こったら大変だ。
そこで私は、この瓶の中身をコップに注ぎ、コップをミクさんの目の前に置いた。

「どうぞ。」

ミクさんは、両手を使って、こくり、こくりと飲んでいる。

「おかわり。」

あっ。ミクさんが喋った。
私は喜んで、ミクさんのコップに白い液体を注いだ。
ミクさんは、今度は片手で、ごくごくと飲んでいる。

「おかわり。」

私はもう一度、コップに液体を注いだ。

「この飲み物は、何ですか。」
「ミルク。一緒に飲む?」
「いえ、結構です。私はまだ、喉が渇いていませんから。」

ミクさんが持ってきた、謎の飲み物「ミルク」。
彼女が美味しくても、人間にとって美味しい飲み物とは限らない。


ミクさんは、ミルクを3杯飲んで、ようやく満足した表情を浮かべた。
彼女が一息ついた所で、私は、唯一の不安材料について質問してみた。

「そういえば、ミクさんが歌う時には、他の事を話しませんでしたよね。」
「うん。」
「何か理由があるのですか。」
「あのね。」

ミクさんは、長時間歌った直後は、ほとんど声を出さない。
喉を酷使する状況下でも正確に歌う為の、工夫なのだそうだ。
彼女は、何時でも同じ歌い方が出来る事に、誇りを持っている。
そして、今日は調子が良かったと語ってくれた。

良かった。本当に良かった。
とりあえず、ミクさんとの作曲活動は、今まで通り続ける事が出来そうだ。
但し、今の話を聞く限りでは、彼女は体調が悪くても歌い続けてしまうに違いない。
今後、ミクさんに歌ってもらう時は、適時、ミルク休憩を挟む事にしよう。
そして、彼女自身にも、作曲活動を大いに楽しんでもらうのだ。


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o 文章作品
o 作品名 = 話さないミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-05-03 on Blogger


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    変な歌とミクさん達

2011年5月2日月曜日

起きた私は自慢する - 黄色い私.

黄色の私
これからね。
起きるんだよ。

あったか布団に包まって、
昨日の疲れは取れたかな、もう少し疲れを取ろうかな。
みくみくみく。
ぐうぐうぐう。


私はね。
起きるんだよ。

時計の針が、動いてる。私も負けずに動くんだ。
あったか布団でごろごろしー。
みくみくみくみく。
ぐうぐうぐう。


本当にね。
起きるんだよ。

おなかが減った。ぐるぐるきゅー。
なにか食べ物ないのかな。非常食に手を伸ばしー。
もぐもぐもぐもぐ。おいしいよー。


おなかが一杯、眠くなり、今日の予定を考える。
お散歩時間は過ぎていて、
ご飯はさっき、食べたから、
これから歌のお稽古かー。
みくみくみくみく。

みくっ。


**** 記録係から一言
o えーと、「寝る子は育つ」。沢山眠れて良かったですね。ミクさん。


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o 文章作品
o 作品名 = 起きた私は自慢する
o 分類 = 黄色い私
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-05-02 on Blogger


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2011年2月19日土曜日

リン警官とミクさん達。第2楽章 - ミクさんの隣.

ミクさんの隣
遠くから見えた、紺色の上に咲く白い花
私達が近づいていくと、その姿は、人の形へと変化した。

紺色の制服を纏(まと)ったリン警官。
チラシには、1日100人捕まえると書いてあったけれど、ここには真面目な雰囲気が漂(ただよ)っている。


「リンちゃん。おはよー♪」
2人は知り合いなのだろうか。私は軽く、リン警官にお辞儀した。

「おはようございます。リンで結構です。」
模範的な言葉使いだ。

「了解です。リンちゃん。」
敬礼を見事に決めるミクさん。
でも、後半の言葉で、その全てが無に帰る。

「今日のご用件は?」
「見学に来たよー♪」
「お仲間の皆さんは、あちらに居ましたよ。」

リン警官と会話しているミクさんは、はしゃいでいるのが一目で分かる。
彼女の目がきらきらと輝いている。そして、彼女の髪まで、うきうきしている。

一方、今日の主役のリン警官は、相変わらず落ち着いている。、
これから、何が始まるのだろうか。

「また来るねー♪」

私達は、リン警官との挨拶(あいさつ)を終えて、集合場所へと移動した。


集合場所は、リン警官から少し離れた所にあった。
机と椅子と葱(ねぎ)が並んでいて、お馴染みのミクさん達が和んでいる。
「お久しぶりです。」
議長のミクさんが、挨拶してくれた。

「今日は、ここで井戸端会議をするのですか?」
「いいえ、リン警官の見学会です。」
葱は兎も角として、机と椅子は、どこから持ってきたのだろうか。
ミクさん達は、今日も元気だ。

「あっ。呼ばれたから帰るね。」
私の後ろから声がした。
多分、作曲する為に呼ばれたのだろう。私が振り向いた時には、声の主は居なかった。

そして、私が、顔を元に戻した時に、その出来事は始まった。


左の建物の方から、リボンを付けた大きな旗が登場し、旗の下が青く染まる。
ひらめく旗に書かれた文字は、「リン警官に踏まれ隊」。

「我々はー。今此処(ここ)で、リン警官に踏まれる為に生きてきた。」
「「生きてきた。」」

「リンちゃんにでは無い。リン警官にだ。」
「「リン警官にだ。」」

「我々はー。崇高(すうこう)な目的を達成する為に、断固、戦い続ける。」
「「戦い続ける。」」

「国家権力の脅(おど)しには屈しない。今此処で、我々の望みを叶えるのだ。」
「「叶えるのだ。」」

「L, O, V, E」
「「リン警官♪」」

「L, O, V, E」
「「リン警官♪♪」」

先頭を行進する、リボンを付けた黄色の旗。
それを支える、青いマフラーの青年。
そして、天に伸びた握り拳の群れと、団結力を示す咆哮(ほうこう)。
その光景は、写真に撮って、次回作の参考にしたい位見事だ。文字以外は。


私が感動している間に、左側、やや正面の建物を覆うように、巨大な垂れ幕が掲げられた。
書かれた言葉は、「リンちゃんLOVE♪ 警官LOVE♪ リン警官もっとLOVE♪♪」

「ドッ♪ドッ♪ドッ♪ドッ♪」
「ジャーン♪ジャッカ♪ジャッカ♪ジャッカ♪」

演奏が始まり、参加者達が、一斉に声を上げる。

「「リンちゃん LOVE♪」」
「「警官 LOVE♪」」
「「リン警官、もっとLOVE♪♪」」

当事者のリン警官は、どこかに無線で連絡を取っているようだ。
仕事熱心な彼女を見て、彼女のファン達は更に盛り上がる。

「「リンちゃん LOVE♪♪」」
「「警官 LOVE♪♪」」
「「リン警官、もっとLOVE♪♪♪♪」」

私の隣に居るミクさんは、「リンちゃん LOVE♪」を繰り返している。
周りに居たミクさん達も、「頑張れー。」と応援している。
私も「リン警官、もっとLOVE♪♪」と叫びたくなったけれど、理性がそれを押し留(とど)めた。


続く


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = リン警官とミクさん達。第2楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-02-19 on Blogger


==
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    リン警官とミクさん達。第4楽章
    +
    リン警官とミクさん達。第1楽章
    分身するミクさん
    出荷数とミクさん達
(2011年8月20日変更。最後の会話中の音符の数を半減)

2011年2月17日木曜日

to_dk文章作品を素材として使う方法 - to_dk作品紹介.

to_dk作品紹介
to_dkでは、初音ミク世界を発展させる目的で、文章作品を素材として公開しています。
to_dkの文章作品を素材として使いたい時は、素材投稿サイト「ピアプロ」からどうぞ。


**** 文章素材の公開場所
次のブックマークから辿る方法が簡単です。

o 「ミクさんの隣」所属作品= ▽ピアプロのブックマーク
o 「黄色の私」所属作品 = ▽ピアプロのブックマーク
o 「青い私」所属作品 = ▽ピアプロのブックマーク
o 「赤い私」所属作品 = ▽ピアプロのブックマーク
o 「付録」所属作品 = ▽ピアプロのブックマーク


**** 利用手順の概要
o 非商用利用の時
    + 素材投稿サイト「ピアプロ」経由でご利用下さい。
    + 作品ページは、上のリンクから辿る事が出来ます。
    + 後は、ライセンス条件を確認して、その範囲内でご利用下さい。
        + 初音ミク度の高い作品は、基本的に、ピアプロの基本ライセンスで利用出来ます。
        + 他の目的でも使用している作品は、トラブルを防ぐ目的で使用条件を追加しています。
o 商用利用したくなった時
    + ピアプロにお問い合わせ下さい。
    + to_dkが要求するのは、素材作者としての氏名表記。
    + 後は、ピアプロの基準に従って、好意的に対応したいと考えています。


==
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    ▼作品紹介
    ▼目次
    > ▼お知らせなど
(2012年5月1日変更。タイトル変更と大幅加筆)

リン警官とミクさん達。第1楽章 - ミクさんの隣.

ミクさんの隣
「ミクさん。おはようございます。」
「おはよー♪」

私が朝の挨拶をした時、ミクさんの返事の声は明るく高かった。
この上機嫌さは、何か、楽しい事があったに違いない。
私は、「一緒に曲を作りましょう。」と声をかける前に、ミクさんの話を聞く事にした。

「何か、良い事ありました?」
「はい。これ。」

ミクさんは私に1枚のチラシをくれた。

-----------------
『リン警官見学ツアー。現地集合。飲食物の差し入れ歓迎』

。。。

ミクだよ。今日行くよ。

ミクです。今日は、毎日100人以上捕まえる所に出かけます。

私もミクよ。私達の世界って、とても平和に見えるけど、
治安はあまり良くないの。

行って見る?行くよね。ミク
-----------------

受け取ったチラシの下に、説明文。
署名が全員「ミク」なのに、誰が書いたのか分かる所が面白い。

「ミクさんは、このツアーに行きたいですか?」
「うん。」

意外だ。このミクさんは、誰かが怪我をしたりするのは嫌いな筈だ。
ミクさんの考えている事は、私には良く分からない。
とりあえず、今日の作曲は中止して、

「準備して、見に行きましょう。」
「うん。」

テーブルには、コロ付きの鞄が2つと、大きなミルクの瓶と、お菓子が沢山。
ミクさんは本気だ。
そして、音楽以外で手際の良い彼女を見るのは、久しぶりだ。

私は、ミクさんの手際の良さに感動しながら、テーブルの上に並んでいる物を、2つの鞄に詰め込んだ。
瓶の蓋はしっかり止めて、衣類とタオルで瓶を覆った。


鞄の準備はすぐに終わったので、私達は、出かける事にした。

てくてくてく。ごろごろごろ。
ミクさんと出かける時、私はいつも、ミクさんの隣を歩く。
なぜなら、ミクさんの後ろは、この周辺で一番の危険地帯だからだ。

たまにミクさんが転びそうになると、髪がありえない速さで動き、彼女はバランスを取り戻す。
この時、ミクさんの後ろにいると、うっかり叩き飛ばされる事があるのだ。

てくてくてくてく。ごろごろごろごろ。
景色を眺めながらミクさんに質問している内に、私達は目的地に到着した。


続く


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = リン警官とミクさん達。第1楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-02-17 on Blogger


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