2011年2月16日水曜日

分身するミクさん - ミクさんの隣.

ミクさんの隣
今日のミクさんと私は、一味違う。
今日は朝から、私達は作曲に取り組んでいるのだ。

私達が作るこの曲は、自分達の目指す声や音を練り込んで、少しずつ出来ていく。
近い将来、この曲を発表する、その日まで。


私がそのような事を考えていると、耳に聞こえていた歌声が、ぴたりと止んだ。
丁度、ミクさんの輪唱が終わった所だ。

「少し休憩しましょうか。」

こくっと頷くミクさん。
私は、冷蔵庫から、ミルクを取り出す。
ミクさんは机の上に、コップを2つ並べる。

「さっきのミクさんの声、2人分一緒に出ていましたよね。」

コップを持ったまま、こっくりと頷くミクさん。
私は、取り出したミルクを、2つのコップに注いだ。
ミルクを飲んで喉を潤したミクさんは、返事の続きを言葉で伝える。

「私、16人分歌えるよ。」
「すごいですね。」
「えへん。」

胸を張って、得意顔で返事するミクさん。

初音ミクは、最大16人分の声で同時に歌う事が出来る。
1トラックに付き1人分、16トラックで16人分の声を出せるのだ。
私は、その仕組みについて知りたくなったので、ミクさんに質問してみた。

「ミクさんは、その時、どのように歌っているのですか。」
「左腕を操作しながら。」

彼女の左の長袖には、シンセサイザーらしきものが付いている。
私はただの飾りだと思っていたけれど、必需品との事だった。

「そのシンセって、歌う事が出来るのですか?」
「「R」で録音。簡単だよー。」

彼女は、笑顔で種明かしをしてくれた。
なるほど。歌う時に、一緒に再生するのですか。


私は過去の記憶を呼び起こす。
先ほどのミクさんは、輪唱の前に「R」の操作を私に要求してきた。
前回歌ってもらった時も、2トラックになると必ず「R」の操作を要求してきた。
前々回の時も、そうだ。

という事は、、、

私は、得意顔のミクさんを、長く眺めていたかった。
だから私は、彼女に聞こえないように、頭の中でこっそりと呟(つぶや)いた。

あなたが本当に歌っているのは、1トラック。1人分だけだったのですね。ミクさん。


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = 分身するミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-02-16 on Blogger


==
関連ページ:
    ▼ミクさんの隣
    ▼作品紹介
    ▼目次
    > 出荷数とミクさん達
    荒ぶる髪の使い方
    目標を立てるミクさん
    +
    制作メモ - 初音ミクに和音で歌ってもらう方法
    制作メモ - レンダリング。性能の低いパソコンで、なるべく快適に再生する