2010年7月22日木曜日

エプロンを付けたミクさん - ミクさんの隣.

ミクさんの隣
ミクさんが、エプロンを付けて自慢げに立っていた。
彼女が持つお皿の中には、料理っぽいものが鎮座している。

「その、得体の知れない料理は何ですか。」
「私の自信作。こう見えても、美味しいって評判なんだよー。」
「本当に?」
「まだ余っているから食べてみて。美味しいよ。」


ミクさんがいそいそと動いた先を見ると、その横に、青いマフラーを首に巻いた不審者が倒れていた。
「おなか一杯なんだって。」

その瞬間、私の脳裏は、ある予感で満たされた。
「なんですとー。」
最後まで体を張る彼を、これほど恨めしいと思ったのは、初めてだ。

周りを見ると、黄色のツンツン頭。
鏡音レンよ、おまえもか。

その隣の紫頭は、かろうじて、意識はあるようだ。


ミクさんが、味見用にと、小皿を差し出す。
「どうぞ。」
勇気を出して、ほんの1口食べてみる。気の遠くなるような衝撃が、私の全身を駆け巡る。

「お味は如何?」
私の気持ちも露知らず、最後は眩しい笑顔で決めるミクさん。

* 「私の口には、合わないみたいです。」
* 「美味しいです。」 => とんでも属性 +10


---------------- 素直に指摘する
私は、近くにあったミルクを一気に飲み干した後、正直に彼女に告げた。
「私の口には、合わないみたいです。」

それを聞いたミクさんは、首を傾げて、こう返す。
「おかしいなあ。VOCALOIDと人間は、味覚が違うのかなあ。」

いいえ、味覚が違うのは、あなただけですよ、きっと。


---------------- 褒める
「美味しいです。」
私は、全身から発する魂の叫びを抑えて、こう答えた。

「ありがとう。沢山あるから、好きなだけ食べてね。」
お皿を山盛りにして渡すミクさん。その笑顔は反則ですよ。


私は彼女の笑顔だけを頼りに食べ進み、倒れる前に、先人達と同じ言葉を呟いた。
「ごちそうさま。」

混濁した意識の中で、彼女の声が明るく響く。
「この料理。私の歌を聴いてくれる人達に、これから食べて貰うんだよ。」

既に倒れた私には、彼女を引き止める力は、もう残ってはいなかった。


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = エプロンを付けたミクさん
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2010-07-22 on Blogger


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関連ページ:
    ▼ミクさんの隣
    ▼作品紹介
    ▼目次
    > 起こしに来るミクさん
    腕を上げるミクさん
    話さないミクさん
(2010年7月23日追加。褒める選択肢での状況)