2011年8月20日土曜日

リン警官とミクさん達。第6楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
私は、開いているドアをノックして、目の前の人物に向かって礼をする。

「失礼します。」

リン警官は、私を見るなり、こう言った。

「ミク代表。お疲れ様です。」

「この姿を見て、初音ミクって良く分かりますね。」
「初音ミク見習いとして、あなたは登録されていますから。」

よりによって、警察にも初音ミクで登録されていたのか。
でも、見習いで本当に良かった。
あの露出度の高い初音ミク公式衣装を着る事になったら、特に真冬は寒過ぎる。

「それは兎も角として。」

私に椅子に座るように促し、リン警官は、本来の業務に戻る。

「今日はもう、大人しくしてね。めっ。」

彼女のお説教が始まった。
ああ、叱っている時の彼女のリボンも、可愛いかもしれません。


お説教が終わると、リン警官は、手作りのカップケーキを私にくれた。

「ありがとうございます。リンさん。」
「ミク達の事、これからも宜しくお願いします。」

いえ、お願いされても困るのですが。
リン警官と握手した後、私は軽くお辞儀して、無事、初音ミクとしての仕事を全(まっと)うした。


リン警官の部屋から出てきた私の目の前には、ミクさん達が並んで待っていた。
私を発見した途端、安心してカップケーキを食べ始めるミクさん達。

「これで、初音ミクの全ての任務完了です。」
「逮捕の協力者も、全員貰えるんだよー。」
「リンちゃん、LOVE。」
「美味しいねー。」

私も一口食べてみた。

美味しい。ミクさん達には悪いけれど、リン警官の料理の腕は格別だ。
「警官を辞めて、ミクさん達に料理を教えて下さい。」と懇願(こんがん)したくなる程の腕前だ。
私は、リン警官に感謝しながらカップケーキを食べ終わり、
この界隈に逮捕者が溢れている理由を理解した。

あまり言いたくないのですが、幸せ過ぎます。リン警官。

私は、ようやく緊張から解き放たれて、リン警官の部屋に入る前の事を思い出す。
私が入室する前に居た場所を振り返ると、泣いていた彼の傍(そば)には、彼が愛する女性の姿があった。
彼女は、リン警官の姿で、

「私の後輩に迷惑をかけたら、承知しないからね。」

リン警官ファンクラブの代表者を引きずりながら、説教部屋に入っていった。


夕方になる頃には、リン警官のお説教が全て終わり、私達のリン警官見学ツアーは解散となった。
夕日に染まる、ミクさん達のシルエット。
取り残されたミクさんと私は、改めて、リン警官に挨拶した。

「お疲れ様でした。カップケーキ、美味しかったです。」
「リンちゃん。また来るね♪」

今度、また此処(ここ)に来た時には、私は喜んでリン警官に逮捕される事だろう。
帰り道には、次回の見学ツアーに合わせて早速作曲の予定を空けておく、駄目なミクさんと私が居た。


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = リン警官とミクさん達。第6楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-08-20 on Blogger


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(2011年8月22日変更。見学ツアーの前の語句を訂正)